Abstract : |
心室中隔欠損, あるいは, それを伴う複雑心奇形に対しては, 現在でも心室切開による閉鎖法が一般的術式となっている. 今回, 教室でVSD42例, これら42例中, PH合併17例, ASD合併6例, MR合併3例, TR合併1例で, その他, 大動脈縮窄複合2例, TOF2例, developing-TOF, 両大血管右室起始症, 修正大血管転位症, 大動脈弓離断症のおのおの1例で, 合計50例に対して経心房的到達法による心室中隔欠損閉鎖術を行い, その経験をもとに術式および心内操作・検討を加えた. (1):II型, III型VSDでは, 三尖弁開排あるいは, 弁輪部切開を行うことによってVSD閉鎖は容易であり, I型, IV型VSDであっても心弛緩が得られれば閉鎖が可能であった. (2):心房レベルでの処理すべき合併奇形を有する症例では, 同一切開創, あるいは心房中隔を介して重複奇形を処理でき, また, 経心室的到達法と異なり冠動脈走行に関係なく心内操作が可能であった. (3):肺高血圧合併例及び複雑心奇形に合併したVSD例では, 術後は低心拍出症候もなく順調に経過した. (4):乳児VSD例では, 超低体温循環停止下に手術が行われた. 心内操作は, 心弛緩が得られたため容易であり, 対象が小さいことは障害にならなかった. (5):VSDの位置診断が術前検査, および術中の心表面からの触診で判別できない場合には, 第一選択として心房切開を行い, VSDの位置診断およびついで進むべき到達法の選択に有用であった. (6):房室弁弁輪部切開を行った症例について術後の弁機能を調べたが, 房室弁機能不全は認められず, また乳児症例では, 超低体温併用による心弛緩が得られ, 房室弁切開の割合が人工心肺のみの症例より少なかった. |