Abstract : |
最近, 先天性心疾患の基本型の心室中隔欠損症に対して, 手術成績は, 最近, 術直後もさることながら, 術後長期予後について検討されてきており, とくに刺激伝導系の障害を残さないように工夫されてきている. 今回, 教室で行った. 50例の経心房的心室中隔欠損閉鎖術を対象に, 術後1ヵ月から2年6ヵ月までの術後経過を心電図, 胸レ線の変化を経心房, 経心室, 経肺動脈, および心筋切除の追加群に分けて検討し, 次のような結論を得た. 1. 経心房的あるいは, 右心室流出路横切開を行った経心室的VSD閉鎖では, 右脚ブロックの発生に差は認められず, また経心房, 経心室, 経肺動脈のいずれの経路からでも心筋切除を追加した症例に脚ブロックの発生が多かった. 2. Rp/Rs, 0.25 Pp/Ps, 0.5以下の症例に完全右脚ブロック発生例が少なかったが, これは, VSDの直接閉鎖症例が多いためと考えられ, 脚ブロック発生がRp/Rs, P/p/Psとの関係では不明であった. 3. Trans-RA, Trans-RVでは, 脚ブロックの発生に差異は認められなかったが, 脚ブロックを起こさない症例では, 術後CTR変化において, Trans-RAの早期の改善と安定が認められた. 4. 完全もしくは, 不完全右脚ブロックの発生は, 3歳未満, 30歳以上の症例に多く発生していた. これは, 3歳未満の症例では, VSDの辺縁に針を刺入すべき線維組織の存在がなく, また, 早期に余儀なく手術されたためであり, また, 30歳以上では長期にわたる右室心筋への負荷によるためと考えられた. 5. 心電図上の軸変化では, 完全右脚ブロック症例は, 術前より軸偏位を示したものが多く, また, 右脚ブロック発生後, 経時的に軸変化が強く, 0°から90°の間に治まらないのがほとんどであった. 一方, 不完全もしくは脚ブロックを起こさない症例では, 術前より軸偏位が少なく, 経時的にも変化がなく, ほぼ0°から90°の間に治まり, また, 術前より軸偏位のあった症例は, 0°から90°に近づくか, あるいは, 術前の軸をそのまま維持する傾向にあった. |