Authors : |
中埜粛, 北村惣一郎, 大西健二, 広瀬一, 大山朝賢, 井原勝彦, 賀来克彦, 河内寛治, 島崎靖久, 八木原俊克, 佐藤重夫, 酒井敬, 秦石賢, 岸本英文, 川島康生, 森透* |
Abstract : |
僧帽弁狭窄症(MS)の術後肺循環動態の推移について, 高度肺高血症を呈するMS症例の術後遠隔期のとくに運動負荷時の肺血行動態の変動を検索しその可逆性に関し検討した. (1)対象は術前肺動脈収縮期圧(PAs)平均81.7mmHg(76~90mmHg)を呈するMS+extreme PH 6例であり(PH群), PAs平均36.6mmHg(26~44mmHg)のMS 8例を対照群とした. Sellors分類でみる僧帽弁性状はPH群ではII型3例, III型3例で, 対照群ではII型3例, III型5例であり, 全例に適正な直視下交連切開術を行った. (2)術後心カテーテル検査では, bicycle ergometerにて50ワット, 5分間の運動負荷を行い負荷終了直前に圧測定および心拍出量の測定を行った. 術後遠隔検査までの期間はPH群は平均1年6ヵ月, 対照群で平均1年3ヵ月であった, (3)PAsは, PH群では術後安静時(R)平均34.0mmHgまで下降を示したが, 運動負荷時(Ex)には平均66.0mmHgまで再上昇を認め(P<0.001), 対照群の(Ex)の平均39.6mmHgとの間に有意差を認めた(P<0.005). 肺血管床圧較差(PAm-LAm)は, PH群では(R)平均12.3mmHgから(Ex)24.0mmHgまで上昇を示し(p<0.01), 対照群(Ex)7.0mmHgとの間に有意差を認めた(p<0.01). 肺血管抵抗は, PH群では術前平均800.5dynes・sec/cm5から(R)253.7dynes・sec/cm5まで下降したが, (Ex)により328.0dynes・sec/cm5まで上昇傾向を示し, うち2例の三尖弁閉鎖不全症合併例では平均481dynes・sec/cm5と高値を示した. 左房平均圧, 左房左室拡張末期圧較差, 僧帽弁弁口面積および心拍出量は両群間に, 術前, 術後(R)および(Ex)において有意差はなかった. すなわち, PH群では, 肺動脈圧は術後安静時には正常域まで下降を示すが, 運動負荷により有意の再上昇を呈した. これは肺血管抵抗の増大に起因するものと考えられ, 肺血管病変に器質的な不可逆性因子の存在が示唆された. |