Abstract : |
1973年から1979年の間に教室で行われた僧帽弁閉鎖不全症(MR)5例, 僧帽弁狭窄症(MS)11例, 大動脈弁閉鎖不全症(AR)11例, 大動脈弁閉鎖不全兼僧帽弁狭窄・閉鎖不全症(AR+MSr)6例に対する僧帽弁置換(MVR), 大動脈弁置換(AVR), 大動脈弁兼僧帽弁置換(AVR+MVR)例を対象として, 術前および術後遠隔期に心カテーテル法による心機能の評価を行い, 安静時および運動負荷時の心血行動態と臨床症状の改善度との相関を検討し以下の結論を得た. 1)MR, MS, AR, AR+MSr例に対する人工弁置換術後の臨床症状の改善は良好であり, これは安静時の血行動態の改善によるものであった. 2)安静時に正常であっても, 運動負荷法によって初めて血行動態上の異常性が見い出されることがあり, 心機能の評価における運動負荷法の有用性が示された. 3)MR, MS例に対する人工弁置換術後の運動負荷によるPAの上昇は, 左室拡張終期圧の上昇と人工弁による血流障害が大きな原因であった. 4)術後遠隔期の心機能の評価法として, 心機能係数を考案し使用した. MR群の心機能係数は11±2, MS群は10±2, AR群は14±1, AR+MSr群は13±2であり, 前2者が後2者に比して低値であった. 5)MR, MS群で術後心機能の改善が不良であったのは, 心房細動の存在とリューマチ性心筋炎による広範な心筋線維化が原因であると推論された. また, MR例では術前の容量負荷による心筋の変性化と術後の後負荷の増大も影響あると推論された. 6)AR, AR+MSr群での良好な心機能の改善性は, 心房細動例が少なかったことと心筋の線維化ないしは変性が軽度であったことによると推論された. |