Abstract : |
左軸偏位を示す二次孔ASDの特異性, 原因などを探るため, 当科にて手術を行った二次孔ASD212例, ならびに一次孔ASD(ECD)10例について, 臨床的分析を行い, 以下の結論を得た. 1)二次孔ASDのQRS軸の値は, 10歳未満で97°±30°(mean±SD), 10歳台94°±40°, 20歳台78°±36°, 30歳以上90°±29°である. 全体の値は92°±34°で, mean±3SDに当る+192°~-10°に含まれないものは, 6例(3.2%)で, 全て左軸偏位であった. 2)左軸偏位の定義は, -30°~-90°とされているが, ASDの特異性から-10°以下とし, 0°以下も検討の対象とした. 左軸偏位二次孔ASDの局在は, 中心位7, 低位1であり, 血行動態面でもASD全体との間に差はなかった. 3)左軸偏位は3.2%(-10°以下)ないし, 2.2%(-30°以下)でほぼ3%に認められた. これは同年代の正常人の2~3倍に相当する. 4)-10°以下の左軸偏位例では, 多少の変動をみるものの, 6ヵ月~4年の観察期間中全てが-10°以下に, -30°以下の4例中3例が-30°以下に止まっていた. このことはECD術後においても, 同様に認められた. 5)二次孔ASDでみられる左軸偏位の原因として, 血行動態因子の関与を否定し得ぬものの, 主として先天的原因による心室内の, 刺激伝導経路の異常によるものと推測される. |