Abstract : |
難治性不整脈であるWPW症候群や心室性頻拍などの手術療法に際しては, 心室異常早期興奮部位を診断する上で心表面興奮伝播図の作製は不可欠である. 従来, 手作業で行われてきたこの作業を, より迅速, 容易に処理し, より客観的な結果を得ることを目的として, ミニコンピューターを中心にした心表面興奮伝播図の自動表示システムを開発した. 心表面の形態をx, yの直交座標で表わされる2次元平面に展開し, 座標上に位置づけられた心表面のN個の各測定点(xi, yi), (i=1,…,N)における興奮伝達時間F(xi, yi)を近似的に表現する, 心表面の位置を変数とするx, yの2次元関数を求め, 関数の等時線表示を行うことによって心表面興奮伝播図を自動表示した. 雑種成犬10頭においては, 多項式関数の次数を6~7次とすれば手作業の心表面興奮伝播図と本質的によく一致した自動表示が示された. さらに本法は心表面の各位置における測定値(興奮伝達時間)を近似的に表現するような数学的手法を用いるため, 測定値に含まれる誤差の影響が軽減された. 同様の理由で, 手作業で心表面興奮伝播図を作製するために必要と思われる心表面電位測定点の数を2/3ないし1/2にまびいても良好な興奮伝播図が表示された. 本研究ではさらに, 心外膜面近接双極誘導波形を興奮到達時点を決定する上で6つの群に分類し, これに基づいて興奮到達時点を自動抽出する方法を考案した. この方法を単極誘導, 多極同時誘導などによる興奮到達時点の自動抽出に応用すれば, オンラインによるより高速, 正確な心表面興奮伝播図の自動表示システムの作製が可能となり, 臨床への応用範囲も拡大されると考えられる. |