アブストラクト(29巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 大動脈弁閉鎖不全症に対する弁置換術後遠隔期における左室機能―とくにそのreversibilityについて―
Subtitle :
Authors : 河内寛治, 川島康生
Authors(kana) :
Organization : 大阪大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 6
Page : 972-986
Year/Month : 1981 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : Bjork-Shiley tilting disc弁による大動脈弁置換術を施行した手術時平均年齢38(27~50)歳の大動脈弁閉鎖不全症8例(男6例, 女2例)において術前および術後平均9(4~15)ヵ月の遠隔期に左室機能を中心とした血行動態の検索を行い以下の結果を得た. 1)術前の左室拡張末期容積(LVEDV)および左室心筋重量(LVM)の平均は234±48ml/M2, 245±61g/m2と著明に増大していた. 術後, LVEDVは106±21ml/m2とほぼ正常範囲内に減少し, LVMも145±30g/m2と著明に減少した. しかし, 術前より1.2±0.2cmとやや肥厚した左室心筋壁厚(h)は術後も1.2±0.2cmと減少せず, したがってLVMはやや高値にとどまった. すなわち, LVMの術後の減少はLVEDVの減少によるものであった. 2)術前の左室駆出率(EF)の平均は, 0.46±0.09と低値であったが, 最低0.37のものを含め, 術後は全例正常範囲に増加し, その平均は0.67±0.06となった. また, 術前, 0.73±0.25circ/secと低値を示したmean velocity of circumferential fiber shortening(mVCF)は術後, 1.49±0.24circ/secとなり, 正常範囲内に増加した. すなわち, 術前の低下したcontractilityは術後正常となることを明らかにした. 3)術前21±11mmHgと高値を示した左室拡張末期圧(LVEDP)は増大せるLVEDVの減少に伴い, 術後は7±2mmHgと正常範囲内に低下した. 4)術後運動負荷により, LVEDPは10±3mmHgと低下ないしは, 軽度上昇し, また, 一回心拍出量係数(SVI)は39±7ml/m2から, 52±6ml/m2と全例増加した. すなわち, 運動負荷により左室は正常に近い反応を示し, その予備力を保持していることを示した. 5)以上, 大動脈弁閉鎖不全のために術前著しく低下した左室機能はBjork-Shiley tilting disc弁による大動脈弁置換術により, 術後遠隔期には, ほぼ正常にまで改善し, 本症における低左室機能がreversibleであることを明らかにした.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 大動脈弁閉鎖不全症, 大動脈弁置換術, 左室機能, 左室駆出率, 左室心筋重量
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