アブストラクト(29巻6号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 高度肺高血圧を伴う心室中隔欠損症の手術適応および表面冷却低体温下開心術による手術成績
Subtitle :
Authors : 志田寛, 井之川孝一, 森本雅己, 池田裕, 津金次郎, 杠英樹
Authors(kana) :
Organization : 信州大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 6
Page : 987-997
Year/Month : 1981 / 6
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 高度肺高血圧を伴う心室中隔欠損症における肺循環動態の変動を, その手術成績と比較検討し, 肺循環動態よりみた手術適応限界決定への指標を追求した. さらに, 本症に対し99mTc-MAAによる肺シンチグラムから, 肺血流分布上・下比および局所肺血流分布障害などを検討し, 肺循環動態との比較検討も併せて行い, 以下の結論を得た. 1)Pp/Ps≧0.75の症例の手術適応限界はRp/Rs≦0.75, Qp/Qs≧1.5とするのが妥当と考えられる. 2)手術適応限界症例において, 100%酸素吸入試験によりPp/Psの減少, Rp/Rs≦0.4, Qp/Qs≧2.5の場合, 良好な手術成績が期待でき, さらに手術適応の拡大も考慮される. 3)肺シンチグラム上・下比は100%酸素吸入試験のPp/Psの減少率と負の相関を示した. 4)III群(Pp/Ps≧0.75)の症例においても, 2歳未満の肺シンチグラム上・下比は1.0以下を示す場合が多い. 5)100%酸素吸入後の肺シンチグラム上・下比は, とくに後面において有意の上昇を示し, すでに2歳未満においても下肺野の器質的血流障害の存在が示唆された. 6)術前, 術後の肺シンチグラムによる肺血流分布状況からみて, 2歳未満においては術後早期より血流分布異常の改善を示す所見が認められた. 7)生存例の術後遠隔期の肺循環動態では, 全例が正常肺動脈圧(中間圧<25mmHg)に回復し, 遠隔期に再び上昇するものは認められなかった. 以上の成績から, 肺血行動態が手術適応限界に近い値(Rp/Rs≧0.75, Qp/Qs≦1.5)を示す心室中隔欠損症においては, 100%酸素吸入後Rp/Rs≦0.4, Qp/Qs≧2.5を示し, 年齢面よりみて2歳未満における根治手術が最良と考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心室中隔欠損症, 肺高血圧症, 肺シンチグラム, 表面冷却低体温法, 手術適応
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