Abstract : |
著者らは開心術の補助手段の単純化の立場から, 乳児例に対しても年長例と同様な操作運用による体外循環を行っているが, とくに乳児開心術においては補助手段に適合した術後管理が重要であることを経験している. この観点から, 1歳未満の心室中隔欠損症を研究対象として乳児の体外循環下開心術における術中術後早期の水分出納と腎機能について検討した. 著者らは術中に77.0cc/kgの過剰な補液を行い, 体外循環に起因する循環血液量の減少に対処し, 術後早期には中心静脈圧を100mmH2O以上に保ち, 良好な血行動態を得ることができた. 輸血は術中では70.1cc/kg(出血量の2.7倍), 術後では出血量のほぼ等量が行われ, 術後3日までの累積血液出納は+62.9cc/kgであった. この過剰輸血は術前の貧血の回復をもたらし, また術後の血液成分の推移から膠質液輸液とみなした方が良いと考えられた. 晶質液輸液は術中では20cc/kg/時, 術後では71.6~94.0cc/kg/日が行われ, 術後3日までの累積晶質液出納は-68.9cc/kgであった. 腎機能を考慮しfurosemideを用いた術後管理により, このように晶質液出納は術後早期に負になったが, 正の血液出納により適当に補われ, 術後の累積水分出納は第1日では+17.6cc/kg, 第2日では-2.9cc/kg, 第3日では-4.8cc/kgと推移し, 水分出納は早期に是正されることを認めた. 腎機能検査の諸指標は術後第1日ではCcrは44.9cc/分/1.48M2, Cureaは38.0cc/分/1.48M2, Cosmは2. 54cc/分/1.48M2, CH2Oは-0.93cc/分/1.48M2で尿細管機能はほぼ正常, 糸球体機能は軽度ないし中等度低下していたが, 年長例との比較から体外循環の影響よりむしろ発育途上の生理的な腎機能の低下と推測された. 以上から, 乳児例に対する年長例と同様な操作運用による体外循環下開心術は, furosemideを用いる適切な補液療法により安全に施行できると考える. |