Abstract : |
ファロー四徴症根治手術後の遠隔時成績について, 種々の面から検討がなされているが, これら症例中, 術後心不全合併例, 血行動態上不満足例など, 再手術の必要に迫られる症例がある. 今回, 著者らは教室で昭和30年より昭和54年10月までに施行したファロー四徴症根治手術症例311例中6例(2%)に再心内修復術を行い全例を救命し, 症状の改善を得た. これら6例の再手術法, 手術時の問題点およびその適応などについて検討し, 以下の結論を得た. 1)症例は根治手術後2~19年(平均10年)を経過した女性5, 男性1例であり, 再手術時での平均年齢は21歳であった. 2)再手術時所見では全例に心室中隔欠損の再開通を認め, 2例に三尖弁閉鎖不全, 2例に右室流出路狭窄および1例に左室・右房交通の合併をみた. 再手術方法として, 全例に心室中隔欠損口のダクロン布による閉鎖術を施行し, 同時に三尖弁形成術, 三尖弁置換術各1例, 肺動脈弁輪部切開2例, 左室・右房交通口閉鎖を1例に施行したが, 癒着剥離も比較的容易であり, 術後の出血も少なく, 全例に症状の改善を得た. 3)本症根治手術における再手術の適応基準として, 血行動態の測定値, 心電図所見, 心胸郭比およびNYHAの重症度分類などの総合判定が必要である. すなわち, 本症根治手術症例の術後の血行動態を含め, 種々の検索から再手術の適応基準として, 右房平均圧20mmHg以上, 右室圧70mmHg以上, 右室―肺動脈収縮期圧差50mmHg以上, 肺対体血流比2.0以上のいずれか1個以上, の障害部位を有し, しかも心電図上で不整脈(心房細動, 期外収縮, 発作性頻脈)を合併, 心胸郭比65%以上で心不全状態にある症例は再手術の適応と考える. 4)諸家の報告, 自験例より, 再手術の死亡率も低く, 予後も良好で, 上記適応基準に該当する症例には積極的に再手術で症状の改善を計るべきと考える. |