Abstract : |
近年, 虚血性心疾患の増加は著しく, また急性心筋梗塞症や開心術後の心原性ショックによる死亡率は高い. これらに対して, 機械的補助循環法の1つであるIABPは広く用いられている. しかし, IABPによる血行動態の変化が, 脳循環系に対しどのような影響をもたらすかは, あまり研究されていない. 今回, 実験的に, 正常犬および心筋梗塞犬に対してIABPを施行し, 大動脈圧, 内頚動脈の圧および流量, 上矢状静脈洞の圧および血液採取, 上矢状静脈洞および上大静脈における脳の循環時間を測定し, IABPの脳循環におよぼす影響について検討した. 正常犬では, IABP施行により, 大動脈圧, 内頚動脈流量は低下傾向を示し, 脳血管抵抗は増加傾向を示し, 脳の循環時間は遅延した. しかし, 上矢状静脈洞圧が低下傾向を示すことにより, 内頚動脈―上矢状静脈洞圧差は, 保持される結果となった. 心筋梗塞犬では, 梗塞作成後低下傾向を示した大動脈圧, 内頚動脈圧は, IABP施行により回復傾向を示したが, 内頚動脈流量は, IABP施行後も減少し, 脳血管抵抗は, IABP施行後も増加傾向を示した. 一方, 上矢状静脈洞圧は, 梗塞作成後に有意の変化を示さなかったが, IABP施行後は低下傾向を示し, 内頚動脈―上矢状静脈洞圧差は, 保持される結果となった. IABPは, 脳循環系に対して, 脳潅流圧は保持されるものの, 脳血管抵抗の増大傾向を惹起し, 脳循環系に対する効果的な成果には乏しいが, 心臓に対する効果により, 二次的には正の効果となりうると思われる. |