Abstract : |
最近著者らが完成した犬摘出心臓用の潅流回路・血行力学データー連続自動処理装置を使用し, 回路充填液の組成を決定するための検討を行った. 11種類の充填液で67回の潅流実験中血液を含まない溶液の潅流では, 犬心臓の心機能の発現程度と維持時間は極めて不満足であった. これに対しHb濃度を10g/dl前後とした各種電解質溶液による稀釈血液によれば一定以上の心機能が発現し, しかも60分以上安定維持できることが分った. そこで, 自動処理装置で得られた左室仕事量を指標として4種類の血液混合液について, 回路充填液としての優劣を比較検討した. その結果, フロロカーボン・血液混合液が最も良好であり, 左室仕事量1,048±67gM/MIN/100g(30分時点), 心機能安定維持時間174±19.7分と最高, 最長であり比較した. H-D血液, H-D加, DKG・血液およびHES・血液の3種の稀釈血液(Hb濃度10~11g/dl)よりも良い成績を得た. FC・血液混合液での潅流は, 心筋における酸素利用の効率も良く, 膠質浸透圧が平均50mmHgと他の3者よりも有意に高かったが, 分時心臓重量増加率で心筋浮腫進展の程度をみても0.22±0.1%/分と低値を示した. 以上の検討成績から, 心臓保護の基礎研究のために犬摘出心臓を著者らの潅流法を利用して研究対象とする場合, 潅流回路の充填液として5~6w/v%FC, 6~8g/dl Hbの混合液でNa, Cl, Caの組成とPHが正常値に補正されたものを, 使用すべきであると結論された. FC・血液で潅流回路を充填することで著者らの開発した実験装置は良好な心機能を長時間安定維持できる. 各種の心筋への侵襲の程度なども, その前・後におけるデーターの比較で正確に判定可能となることから, FC・血液混合液は, 有用な手段として利用すべき犬摘出心潅流法で有望な回路充填液と思われる. |