Authors : |
加畑治, 佐藤成和, 横山温, 荒木純一, 田林晄一, 浜田幸男, 東郷孝男, 渡辺孝, 堀内藤吾 |
Abstract : |
肺動脈弁輪を越えて右心流出路を拡大する場合, 肺動脈弁逆流を防止する目的で弁つきパッチが広く臨床で用いられているが, その材質の経時的変化, 弁逆流の進行, そして成長に伴う生体の順応など解明すべきいくつかの問題点がある. 本研究では上記問題点を明らかにすべく臨床と同じような弁つきパッチを用いた実験モデルを作成し, 成長をさせ追求した. すなわち, 幼若犬を用いて右心流出路を弁つきパッチにて再建し, 体重が2倍になるまで成長させ, その間の弁つきパッチの経時的変化, 血行動態, 病理組織学的検索, さらには材質の違いによる検討などを行った. その結果, 自家心膜弁つきパッチは血栓形成に端を発し, 癒着, 瘢痕収縮同化し, 弁機能は比較的早期に保てなくなることが判明した. したがって, 同様の発生機転は臨床例においても起こりえ, 終局的には同じ傾向をたどると考えられた. また, 豚グルタルアルデヒド処理心膜弁つきパッチは前者と比べ長期間形態が保たれ, 長く弁機能が保たれるが, 遠隔期では血栓形成, 石灰化を生じ弁機能は途絶した. 自己遺残弁輪および弁尖は成長を続け, 遠隔期においては著明に肥厚, 拡大し, ある程度の肺動脈弁逆流を代償していることが判明した. したがって, 自己の弁輪, 弁尖の温存は重要であると考えられた. |