Abstract : |
開心術後患者の血行動態を炭酸ガス産生の面から考察した報告は少ない. 著者は実験犬で左心バイパス法により大動脈血流量を変化させた場合, 並びに開心術後患者において肺よりの炭酸ガス排泄量を実測することにより心拍出量の変化による代謝量の変動を観察した結果, 総代謝量は心拍出量と正の相関を示すことを認めた. (実験…y=47.9±33.09X, n=35, r=0.77, p>0.001, 臨床y=120.7+55.6X, n=72, r=0.67, p<0.001)したがって低心拍出量状態では組織の代謝量は減少し, 酸素供給量, 酸素消費量, PvO2, PaCO2などは減少し, また肺においては, 換気血流比の増大, 死腔率増加, シャント率低下などが観察された. 臨床例では低心拍出量状態の患者では必ずしも嫌気性代謝の亢進は観察されず, また末梢血管抵抗増加や末梢皮膚温の低下などが観察された. 以上の事実から低心拍出量症候群LOSにあっては, 心拍出量の減少により組織と血液の接触面積が減少した結果, 好気性代謝量が減少し, 一方乏血部位では嫌気性代謝が亢進しないような一種の静的平衡状態が存在すると考えられた. 嫌気性代謝が亢進しない理由として, 乏血部位の末梢血管収縮によるmild hypothermic effectなどが示唆された. また肺からの炭酸ガス排泄量やPaCO2はCO2 analyzerにより非観血的, 経時的測定が可能で, LOSの指標として, 従来のPvO2, CaO2-CvO2などに加えて有用な指標となろう. |