Abstract : |
教室では, 現在, 乳児期肺血流量減少型心疾患のうち, 1)根治術困難ないしは不能のもの, 2)この時期の根治術の成績を考慮し, 無酸素発作に対して救命を図るもの, 3)将来の根治術に対して肺動脈の発育を期待するものに対して, 体肺動脈短絡術を選択しており, その術式は, Blalock-Taussig手術を原則としている. その手術側決定に当たっては, 肺動脈の発育状態を重視し, 細い発育不良な肺動脈側を手・術側として選択している. 動脈管依存例では, 動脈管を閉塞せぬよう肺動脈を遮断する必要があり, 左右肺動脈の発育に差がなければ, 動脈管の反対側を手術側として選択した方が安全に手術が行えるものと考えている. 鎖骨下動脈が, 有効な吻合孔を得るには細すぎたり, 短すぎたりした場合や, 起始異常の例には, Goretex graftを用い体肺短絡術を行っている. 昭和55年9月末までに経験したBlalock-Taussig手術は144例であり, うち1歳未満の65例(45%)を対象に検討した. その手術成績は月齢間に差はなく, 疾患により差が認められた. PPAの右室発育不全, AspleniaのTAPVD, SVの左心不全等, 合併した複雑心奇型による死亡が多く, 吻合手技よりも原疾患の複雑性の関与が大きいと考えている. 教室では, 昭和50年末までは, 吻合にあたり, 後壁連続, 前壁結節縫合法を, それ以後は, 全周結節縫合法を採用してきた. 縫合手技による遠隔期開存率をみると, 半周連続縫合法では64%であるのに対し, 全周結節縫合法では, 92%であり, 開存率の明らかな向上を認めている. 7-0縫合糸を用いた全周結節縫合法の採用により, 開存率の向上をみており, 乳児期肺血流減少型心疾患に対する姑息的手術としてBlalock-Taussig手術を第一選択とすべきであると考えている. |