アブストラクト(29巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心室性頻拍の外科治療に関する基礎的研究─とくに凍結手術の効果について─
Subtitle : 原著
Authors : 小林弘明, 岩喬
Authors(kana) :
Organization : 金沢大学医学部第1外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 8
Page : 1334-1344
Year/Month : 1981 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 種々の不整脈の中で最も重篤で致死的といわれる心室性頻拍に対する安全かつ確実な手術術式の開発を目的として基礎的研究を行った. 犬において冠動脈のmultiple ligationを施行することにより急性心筋虚血を作製し, 4~25時間後に心室性頻拍, ないし頻発する期外収縮を得た. 心表面マッピングにより, 心表面最早期興奮部位を決定した. 18例中16例は左室起源, 2例は右側起源でいずれも虚血領域に近接した正常側に発しており, 興奮はその部よりほぼ同心円状に伝播していた. 多重針電極を用いた心筋筋層内マッピングを13例に施行し, 心内膜側最早期興奮部位が心外膜側最早期興奮部位の直下にはなく, 2cm以内の範囲で離れて存在していることが証明された. 13例中, 左室起源の2例を除いて, 11例(85%)で心内膜側に真の最早期興奮部位が確認された. プログラム刺激を利用して6例に心室性頻拍の誘発・停止を試み, 発生機序の解明を行った. 結紮後24時間以上を経過した例の中には, 誘発, 停止の可能であったものがあり, これはエントリー性頻拍と考えられた. 14例の心室性不整脈に対し凍結による外科治療を施行した. 手術方法はまず最早期興奮部位において心外膜側よりの凍結を行い, 効果不十分な場合には心室小切開, 心内膜側よりの凍結を併用した. 心外下側からの凍結により3例, 心室切開の追加により2例, 心内膜側からの凍結の追加により1例, 計6例(43%)で不整脈の完全消失をみた. 残り8例中6例については不整脈の著しい改善を得ており, したがって凍結療法の有効率は14例中12例(86%)であった. 本研究における心室性不整脈の多くは虚血境界域心内膜下の心筋細胞あるいはプルキンエ細胞に起源を有していた. 凍結療法は侵襲の少ない安全な方法であり, 心室性頻拍の治療にあたり非常に有用なものと考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 心室性頻拍, 心表面マッピング, 心筋筋層内マッピング, プログラム刺激, 凍結手術
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