Authors : |
浜田洋一郎, 新津勝宏, 安井豊, 佐々木峻, 遠藤薫, 伊藤伊一郎, 菰田研二, 漆久保潔, 工藤清太郎, 似鳥俊明, 蒔苗隆 |
Abstract : |
心タンポナーデを合併した重症な滲出性心膜炎であっても, その治療は長期的な展望のもとに再発予防の面を考慮しながら治療されるべきである. その観点から, 著者らは重症な滲出性心膜炎症例の救急的治療として, その治療効果が大きく, 手術侵襲が少なく, 短時間での心膜到達と心膜切除が可能な剣状突起下心膜開窓術を行った. 昭和46年から昭和54年までの岩手医科大学第3外科教室における剣状突起下心膜開窓術11例について, 本術式の安全性, 有効性と心膜切除面積の多少による術後再発を検討した. 1. 心包穿刺は症状の改善を得られるが, 4例の心包穿刺例中血性滲出液3例は排液不能か, 排液が良好であっても早期に再貯留を来し, 救急手術を必要とした. 滲出液の性状が血性の場合, 穿刺後早期の心膜切除が必要であると思われる. 2. 緊急的心膜到達法として, 本術式は局麻下で可能である. 呼吸困難を示した7例に局麻下で5例, 全麻下で2例に本術式を行い良好であったが, 時に術後早期に突然の死亡例を経験することから, 手術, 術後管理には十分な注意が必要である. 3. 心膜切除が大きいほど術後排液量が少なく, 排液管抜去は早期に可能であった. 4. 心膜開窓術としての剣状突起下心膜開窓術は非開胸下に可能であり, 心膜切除面積の十分な例では再発が少なく, 心膜切除は少なくとも4×3cm以上が望ましい. 以上, 剣状突起下心膜開窓術11例の検討で, 本術式は診断, 治療の面で安全かつ有効な手術である. |