Abstract : |
血管拡張作用, 血小板凝集抑制作用, 利尿作用など多くの薬理作用を示すprostaglandin E1(PGE1)を体外循環中に使用し, とくに末梢循環に及ぼす影響を観察した. 症例は小児先天性心疾患の57例であった. これをPGE1 0.01μg/kg/minを投与した群(PGE1群)26例, phenoxybenzamine(POB)を1mg/kg投与した群(POB群)14例および対照群17例に分け, 体外循環中の血行動態, 尿量および血小板数の変動について比較検討した. 平均動脈圧はPGE1群は経過中60~70mmHgと安定した動向を示し, 対照群と比較すると平均21%(p<0.01)低値を示し, 強力な血管拡張作用を見せた. 中心静脈圧は他の2群より経過中有意に低値をとり, 対照群とは平均20%(p<0.05)低値で, 末梢動脈拡張作用と同時に末梢静脈系の拡張作用も示した. 末梢血管抵抗係数はPGE1群で900~1,400dynes・sec・cm-5・m2, 対照群で1,100~1,800dynes・sec・cm-5・m2, POB群で900~1,500dynes・sec・cm-5・m2という変動を示し, PGE1群は対照群より平均23%(p<0.05)低値で, POB群との比較でも有意に低下を示した. 酸素消費量でも, PGE1群は他の2群より高値をとり, 対照群より平均23%(p<0.05)と有意に高値を示した. 末梢循環改善という初期の目的に対しほぼ満足する結果であった. 尿量の比較では, PGE1群は他群より早期より良好な尿量を得, 総尿量で対照群より38%(p<0.01)と有意に高値を示した. 血小板数の変動では, 体外循環直後と術後における血小板の減少率がPGE1群は低く, 血小板保護の面でも有効であった. 肺循環でその大部分が代謝されるというこの薬剤の特性から, その作用時間が短くそして投与量依存性が強いことが利点となり, またPGE1が持つ薬理作用を考えに入れた時体外循環への応用がとくに有効であると考える. |