Abstract : |
体外循環の病態生理を解明し, より安全な体外循環を確立し, 術後管理を適確に行うための手がかりを得る目的で, 開心術例のインスリン, グルカゴン, アミラーゼ, ガストリン, カテコーラミンなどの術中, 術後の動態を検討した. 対象は開心術例25例で, 気泡型人工肺を用い, 充填液はヘパリン血, 乳酸加リンゲル液を使用し, 潅流指数2.2L/m2/min, 稀釈率平均27.3%, 最低直腸温平均28.9℃, 動脈圧平均67.7mmHg. 体外循環所要時間平均84分であった. 結果は次のようであった. 1. 血中インスリン, グルカゴン, アミラーゼ, ガストリン値, および尿中カテコールアミン値は, 体外循環中は低下し, 術後は上昇し第1病日で最高値を示し, 以後低下した. 2. 各ホルモンおよび酵素値は, 術後第1病日の値同志の間に相関を認めた. 3. 体外循環の条件のうち, 平均動脈圧と術後第1病日のインスリン値の間に, r=-0.49(p<0.02)の相関係数が認められた. このことは体外循環中の平均動脈圧が術後のインスリン値に関与する可能性を示すものと考えた. 4. 術後第1病日のインスリン値と, 収縮期血圧, 脈圧, イソプロテレノールの使用濃度との間にそれぞれr=-0.44(p<0.05), r=-0.48(p<0.02), r=0.42(p<0.05)の相関係数を認めた. 5. 各ホルモンおよび酵素値で, 体外循環中の低下の度合と, 術後第1病日の上昇の度合との間に相関が認められた. 以上から, これらのホルモンおよび酵素の動態は, 体外循環中は低下し術後に上昇したが, これらはたがいに影響し合うこと, 体外循環中の低下と術後の上昇には関係があること, およびこれらの変動と体外循環中の動脈圧, 術後の血圧などとも関連がある可能性を示唆するものと考える. |