Abstract : |
肺癌手術に際し癌の浸潤が広範囲であるため切除不能の症例に対し, 開胸時気管支動脈内挿管の手技を開発し, 長期持続動注法を5症例に施行した. 制癌剤投与期間は最短30日から最長71日であった. 癌に対する局所効果は著しいものがみられ, 特に剖検しえた2例の原発巣は, 1例では完全壊死になり他の1例では少量の残存癌組織を認めるのみであった. 大きな障害となった副作用は1例も認められなかった. 気管支動脈内制癌剤投与時の末梢血中の制癌剤濃度を測定したところ最高濃度が, 経静脈投与に比べて数分の1と低く, このことは腫瘍への薬剤の取り込みを示唆する一方, 全身的副作用の発現程度が少ないことに関係していると考えられる. また, 気管支動脈内制癌剤投与時の薬剤の広がりをTc99-MAAを気管支動脈内に注入しシンチグラムによって経時的にみると, 制癌剤投与開始時では気管支樹枝に沿って広範囲に分布するが, 制癌剤投与量が増すにつれてその範囲はしだいに縮小し, ついには, アイソトープ投与直後に肝腎に集積がみられるようになる. このことは制癌剤によって血管壁が障害されA-V shuntが出現するためと考えられ, 制癌剤投与の期間・量も制約される. 今後, 制癌剤の種類・投与量の検討を要するが, 観血的気管支動脈挿管持続動注療法は肺癌の治療法の一手段として有効である. |