Authors : |
数井暉久, 大野猛三, 木村希望, 井上紀雄, 山口保, 横山秀雄, 山岸真理, 佐々木孝, 上田睦, 大堀克己, 田中信行, 小松作蔵 |
Abstract : |
札幌医大胸部外科で昭和55年12月末日までの過去21年間に経験した破裂性胸部大動脈瘤29例のうち23例に外科治療を施行した. その内訳は上行大動脈瘤2例, 弓部大動脈瘤7例, 下行大動脈瘤11例, 解離性大動脈瘤I型2例, およびIII型1例である. 動脈瘤の破裂部位は肺実質内破裂12例, 胸腔内破裂6例, 心嚢内破裂3例, 縦隔内破裂1例および上大静脈内破裂1例である. 手術手技は人工血管置換術13例, (うち左肺全摘除術2例, および弓分枝再建術2例を同時に施行), 側壁縫合術7例(うち左上葉切除術1例および肺楔状切除術1例を同時に施行), および試験開胸3例である. なお補助手段としてはside-clampによる部分遮断3例を除くと, 全身低体温法5例, 電気的誘発細動法1例, 部分体外循環法3例, 完全体外循環法2例および分離体外循環法6例である. 手術成績は試験開胸3例を含め11例(48%)が早期死したが他の12例を救命し得た. 一般に高齢者の症例, 術前にショックが存在する症例, 動脈瘤外径が大きな症例, 急性解離性大動脈瘤I型, 弓部大動脈瘤, 胸腔内あるいは心嚢内破裂の症例の手術成績は不良であった. 破裂性胸部大動脈瘤の自然予後は極めて不良であり積極的な外科治療が唯一の救命手段といえるが, 症例の重篤さおよび手術侵襲の過大さからその成績は不良である. 本症の手術成績を向上させるには予防的な治療すなわち破裂前に選択的手術を施行することが重要である. とくに解離性大動脈瘤を除くと破裂の前駆症状を呈する期間に適確な診断を下し, 早期に外科治療を施行することが肝要である. またこのためには, 胸部大動脈瘤に対する手術手技および補助手段の確立, 術後管理の向上など選択的手術の安全性に対する対策も重要であると思われる. |