Abstract : |
近年, 虚血性心疾患, 重症心疾患の心臓手術の増加とともに, 体外循環法, 術中心筋保護法, 術後管理が進歩し手術成績も向上している. 最近, BregmanらによりPulsatile Assist Device(PAD)が開発され, これを体外循環の回路内へ組み込み, 容易に拍動流体外循環, カウンターパルセーションを行いうるようになった. そこで著者はこのPADの体外循環中および終了直後の心機能に及ぼす効果について実験的に検討した. 雑種成犬を用い, 常温完全体外循環下に45分間の大動脈遮断を行い, これを術後急性心不全の実験モデルとした. 大動脈の遮断解除後は両心バイパス, すなわちnon workingの状態から部分体外循環, 体外循環離脱直後, 離脱後60分までと経過を追い検索した. 10頭にはPADによる拍動流体外循環, カウンターパルセーションを行い(PAD群), 9頭にはローラーポンプによる無拍動流体外循環を行い(コントロール群), 両群における心機能, 心筋代謝について検討し, 以下の結果を得た. 1. PAD群は, PADによる拍動流体外循環により, 両心バイパス(non working)の状態で, コントロール群に比し総冠血流量の増加, 冠血管抵抗の低下, 正常に近い酸素消費量を示す傾向にあった. 2. PAD群は, PADによるカウンターパルセーションにより, 体外循環離脱直後, 離脱後60分で, コントロール群に比し大動脈血流量, 冠血流量に有意の増加を認めた. 3. PAD群は, PADによるカウンターパルセーションにより, 体外循環離脱直後に, コントロール群に比しexcess lactate, redox potentialの面でより有意に好気性代謝を示した. 以上の実験結果から, PADによる拍動流体外循環, カウンターパルセーションは虚血性心疾患, 重症心疾患などの心臓手術に際し, 術後急性期の心機能の回復に良好な効果を及ぼすものと考える. |