Abstract : |
ファロー四徴症に対する姑息的手術として, Blalock-Taussing手術は安全かつ症状改善の得られる優れた術式で, 本症の第一選択の姑息的手段として応用されている. しかし, 本術式は一側肺血流増加と吻合側の肺動脈拡大は得られるが, 反対側の血流量と肺動脈の発育は不十分である. 今回, 著者らは両側肺動脈に対称性に血流量が得られ, 右→左短絡が減少し, 肺動脈の左右均等な増大が得られるBrock手術と直視下右室流出路拡大術について検討して, 以下の結論を得た. 1. Brock手術を本症の65例に施行し, 手術死亡は3例(4.6%)であり, 直視下右室流出路拡大術は9例に施行し, 手術死亡は1例(11.1%)である. 2. Brock手術の適応は根治手術が困難と思われる乳幼児期重症例, また, 本症の重症例(動脈血酸素飽和度60%以下, ヘマトクリット値60%以上)で右室流出路に限局性狭窄例, 前回短絡手術後なお有症状例, 根治手術時に冠動脈走行異常を認める症例などあり, 直視下拡大術の適応は肺動脈発育不全, 各種姑息的手術後の肺血流減少例である. 3. Brock手術は肺血流量を左右対称性に増加させ, 右→左短絡を減少させ, 両側肺動脈を拡大し, 左心系発育を促し, 側副血行路の減少で根治手術に有利に働いている. 問題点として, 漏斗部狭窄例で効果は不十分であり, 術後肺動脈弁閉鎖不全, 肺動脈圧上昇などの問題点を有し, 直視下流出路拡大術では左右短絡の変動で, いつ根治手術を行うべきかなどの問題点が残されている. 4. Brock手術後の再手術は35例(54%)に施行し, 根治手術32例(4)=12.5%, 姑息的手術7(0), 再手術無し27例で, このうち, 16例に生存が確認し, 11例がNYHA I~II度で, 経産2例が含まれ, 右室流出路拡大術は1例に根治手術を施行, 生存5例中の4例はNYHA分類I~II度である. |