Abstract : |
熱希釈法の原理によつて左室拍出量(CO), 駆出分画(EF), 左室拡張終期容積(EDV)を測定する方法を検討した. 一定量の冷水を左室に注入して血液温度の変化を上行大動脈または左室において測定し, 熱希釈曲線を記録する. COはこの熱希釈曲線の積分によって求められる. また血液温度をTb, 冷水注入後の左室の血液温度をTo, その後n心拍目の左室または上行大動脈の血液温度を TnとすればEF=1-(Tn-Tb/To-Tb)1/n-1 であり, EDV=SV/EF である(SVは左室1回拍出量). この研究のために2種のサーミスタ付カテーテルを作成し, このカテーテルを用いて異なる3方法の熱希釈法を行った. 犬を用いて実験を行ったが, COについては3方法の熱希釈法のいずれによっても電磁血流量計によって得られたCOに対し有意の相関を示す値が得られた. EFについては1本のカテーテルによる左室注入・上行大動脈血液温測定の方法では正しい値は得られなかったが, 左室注入と上行大動脈血液温測定に別々のカテーテルを用いた場合には正しく測定されるものと考えられた. 熱希釈法によって計算したEDVを摘出心臓の容積圧曲線から得たEDVと比較したが, 両者の間に有意の相関は見られなかった. しかし, 熱希釈法施行中の僧帽弁逆流と左室拡張期圧測定上の技術的な問題が, これらの方法によるEDVの測定を不正確なものにしたと考えられた. 今回の研究で明らかになった問題点を解決することにより, 熱希釈法によってCO, EF, EDVを測定することは可能になるものと考える. |