Abstract : |
薬剤前処置による開心術中の心筋保護効果の実験的検討を行った. 特にCoenzyme Q10を中心に検討し, さらにβ-methasoneおよびActihaemylの前処置による効果と比較した. 実験には雑種成犬104頭を用い, 以下の4群に分けて実験を行った. 実験群(I):希釈体外循環下に心筋温25℃において30分から120分の大動脈遮断を行い, その血行動態の回復をCoQ10前処置群と非処置単純遮断群にて比較したが, 120分遮断においてCoQ10前処置群の生存率が有意(p<0.05)に単純遮断群より良好であつた. 実験群(II):CoQ10前処置群において心筋温を30℃から10℃として, 60分から300分の大動脈遮断を行ったが, 30℃では60分, 25℃では120分, 20℃では180分, 10℃では240分まで大動脈遮断が可能であった. 実験群(III):心筋温25℃大動脈遮断120分の実験条件にて, CoQ10, β-methasone, Actihaemyl前処置群の血行動態回復の比較を行った. 心停止液としてYoung液を併用し薬剤前処置群とし, 対照として非前処置Young液使用群とCoQ10前処置Young液非使用群を比較した. 左室機能曲線の結果より, Young液単独群の回復が不良で他の薬剤前処置群との間に有意差(p<0.05)を認めた. 実験群(IV):心筋温25℃大動脈遮断120分の時点と, 遮断解除後60分再灌流の時点で左室心筋を採取し, 心筋ATP, Lactateの定量と電顕標本作成を以下の4群について行い比較した. 1)単純遮断群, 2)CoQ10前処置群, 3)CoQ10-Young液群, 4)Young液単独群. ATP定量の結果, Young液非使用2群の大動脈遮断120分の時点の心筋ATPは著明に低下してミトコンドリアの形態的変化が軽微であったのに対し, 単純遮断群ではミトコンドリアの膨化, 破おり, Young液使用2群との間に有意の差を認めた. 心筋微細構造の比較では, CoQ10前処置群で壊などがみられ, Young液単独群でもクリスタの断裂など強い変化が見られた. 以上の血行動態, 心筋代謝, 心筋微細構造の総合的評価よりCoQ10前処置Young液併用群が最も良好な結果を得た. |