Abstract : |
雑種成犬を用いた完全体外循環下の実験にて開心術中の各種心筋保護法を心筋のATP, CP, ADP, AMP, lactate, glycogen, G-6-Pを測定し, エネルギー代謝面より比較検討した. 実験群はTopical hypothermia群,血液冠灌流(beating empty heart)群, Cardioplegia群で, さらにcardioplegiaにおけるglucose, insulin添加によるglucose enhancement効果の有無をみるためCardioplegia群をSolution-I群(無glucose, 無insulin, 電解質液), Solution-II群(2%glucose, insulin添加, 電解質液), GIK群(5%glucose, insulin添加, 低Na+, 無Ca++, 無Mg++)の3群に分けた. その結果 1. 低温によるO2 demand抑制のみであるtopical hypothermia群と比較して, 低温にelectromechanical arrestによるO2 demand抑制も加わったCardioplegia群は高エネルギー燐酸化合物(ATP, CP)の温存も良好であり, lactateの蓄積も少なく心筋保護効果は優れていた. 2. Cardioplegiaにおけるglucose enhancementは期待された高エネルギー燐酸化合物の温存効果はなく, かえって心筋に有害なlactateの蓄積をもたらした. 3. Solution-I群と比較して, Solution-II群ではG-6-Pの上昇からみて解糖系の抑制が考えられた. 4. GIK群ではglycogenの分解利用の抑制が推測される結果が得られた. 5. 血液冠灌流群は高エネルギー燐酸化合物の温存では最も良好な結果が得られたが, 心筋の一部に嫌気的代謝の存在が示される結果が得られ, 心筋の血流分布異常が考えられた. |