Abstract : |
自然気胸肺にみられる限局性の気腫性嚢胞(bleb)はほとんどの開胸例の肺尖部に観察されたが, その成立機序についてはまだ不明なことが多い治療の目的で開胸した22例から38個の嚢胞を採取し, 形態学的に検索して破綻に至る機序を考察した. はじめに実体顕微鏡を用いて, 気腫性嚢胞の膨隆部分を切開して嚢胞底部の構成を観察した. 嚢胞は肺組織と胸膜から構成されていた. 次いで1cm前後のbleb15個について連続切片を作成し, ヘマトキシリンエナシン・エラスチカ重染色により再構築を行つた. 嚢胞の底部については概略三型に分類することができた. すなわち(1)肺組織が全面的に露出している型, (2)肺組織の一部が線維性組織によって被覆されている型, (3)線維性組織がほぼ全面を覆っている型である. blebの再構築により以下の成績が得られた. 1. すべて, 気道と, 肺胞道か呼吸細気管支のレベルで交通していた(100%), 2. 呼吸細気管支は底部の肺組織に平行に一部露出しながら分岐横走していた(100%). 3. 嚢胞を形成する肺組織と胸膜の境にはelastofibrosisが認められた(93%), 4. blebは孤立性であった(80%), 5. 胸膜内の外弾性板が断裂もしくは消失していた(75%), 6. 肺胞道や呼吸細気管支の開口部近くに肉芽組織の形成が認められた(40%). これらの6項目の因子がblebとしての気腔を維持することに役立ち破綻にも関与する. そして急激な体位変換とかvalsalva手技様加圧とかによるbleb内外圧に圧較差を生じた時, 自然気胸は発生すると考えられる. |