Abstract : |
心筋保護手段によって, I群(n=14)循環冷却, II群(n=22)循環冷却+cardioplegia併用, III群(n=12)循環冷却+局所冷却併用, IV群(n=16)循環冷却+局所冷却+cardioplegia併用に分類し, 体外循環前, 手術終了時並びに術後急性期の心筋代謝推移を検索し, 各種心筋保護法の評価を行った. 心筋乳酸摂取率は, 体外循環前, 手術終了時, 術後6時間, 術後第1日の順にI群25.2±6.9%(mean±SE), 0.2±4.6%, 2.4±4.3%, 2.9±4.8, II群24.2±2.5%, 9.8±1.0%, 16.1±3.4%, 10.1±3.8%, III群21.4±3.2%, 3.8±4.6%, 13.7±3.3%, 16.6±3.2%, IV群23.1±4.6%, 7.1±4.6%, 9.9±5.8%, 15.9±5.2%, であり, II, III, IV群で比較的良好な値がえられた. 心筋障害の少ない体外循環前の動脈血乳酸値に対する冠状動-静脈洞血乳酸較差は, 回帰式Y=0.37X-1.37, n=54, r=0.65(p<0.001)であり, 手術終了後, 全群において両者の関係は右下方に偏位したが, IV群が最も体外循環前回帰式に近接した値をとり, 良好な心筋代謝維持が示された. 大動脈遮断時間を60分以内に限定すると, 手術終了時の心筋乳酸摂取率は, I群-0.54±4.8%, II群10.5±4.0%, III群5.6±4.5%, IV群13.5±5.2%であり, IV群の循環冷却+局所冷却+cardioplegia併用で最も良好な心筋乳酸摂取率が得られた. IV群においてcardioplegia授与間隔が30分以内の頻回授与では好気性代謝が維持されたが, 授与間隔が38, 40, 41, 45minと延長した症例では心筋乳酸摂取率が負の嫌気性代謝となり, 授与間隔が30分以内のmulti-dose cardioplegiaの有効性が心筋代謝面からも証明された. |