Abstract : |
心臓手術後のCPK総活性値(T-CPK), 特にMB-CPK値は心臓手術に基づく心筋傷害の定量的な評価の指標として有用視されているが, いまだその詳細な分析はなされていない. 心臓手術495例を対象に手術々式を含めた手術に伴う様々な要因とCPK総活性値の最高値(MaxT-CPK)およびその総遊出量(ΣT-CPK), MB-CPK値の最高値(Max MB-CPK)およびその総遊出量(ΣMB-CPK)との相関性を統計的に分析検討し, 次の結果を得た. 1. 体外循環下に施行したすべての心臓手術症例で術後MB-CPK値は上昇する. 2. VSD根治手術やファロー四微症根治手術などの心室筋切開を伴う手術では各CPK値は有意に高値をとり, また10歳以下の小児症例も10歳以上の群に比し各CPK値は有意に高値をとる. 3. 各CPK値は, 術後早期の心電図変化, カテコールアミンの使用, 臨床経過などと相関が認められ心臓手術時の心筋損傷を示すひとつの指標として有用であると考える. しかし体外循環条件, 心蘇生時のカウンターショックの回数, 心室性期外収縮(PVC)に対するキシロカインの使用などとは統計学的に有意な関係は見られなかった. 4. ΣMB-CPKとMaxT-CPK, MaxMB-CPKとの相関係数は0.89, 0.95と良好であり, MaxT-CPK2000IU/L以上, MaxMB-CPK200IU/L以上を異常値として検討した臨床結果とよく対応しており, 術後の経時的なT-CPKおよびMB-CPK値の測定の意義は大きい. 5. 今回の検討では各CPK値と心筋保護法との間に統計的に明確な有意差は得られず, さらに今後の検討を要する. |