Authors : |
赤川治夫*, 大石喜六*, 星野芳弘*, 田尻敏行*, 熊手宗隆*, 深水良*, 緒方充彦*, 田代忠*, 武本憲重*, 原洋*, 石野哲哉*, 古賀道弘*, 押領司篤茂**, 藤堂景茂** |
Abstract : |
開心術におけるcardioplegia法の利点として, flaccidなdiastolic arrestによる手術操作の容易性や, その優れた心筋保護効果があげられるが, 教室では乳幼児例においてcardioplegia液注入によりcardioplegiaの利点であるdiastolic arrestが得られず, 心筋のwall tensionが上昇し, stone heartを思わせるsystolic arrestを経験した. 使用したsolutionはYoung液または久留米solution I(K:30mEq/L)で, 4例中3例は術前状態不良な緊急手術例で, STの著明な低下を伴っていた. 2例が死亡したが, 1例はsystolic arrestが主死因とは考えられなかった. 2例は生存しており, 本症はreversibleの可能性があると考えられた. 4例の共通因子は低年齢, 心室肥大の存在, 低心筋温でsolution注入直後に発生していることであり, また心筋組織内にCa沈澱も証明されず, 本症はstone heartとはやや本態を異にするものと考えられた. 本症の発生機序に関して, potassium contractureなどと関連づけて文献的考案を行った. 高カリウムによる心停止の場合, Ca++の細胞内流入が増加するが, 低温因子, 肥大不全心によるATP減少, 筋小胞体機能障害などが存在すると, 高まった細胞内Ca++のpump outができず, 弛緩できない状態となり, これがsystolic arrestに相当するものと考えられた. 今回の考察ですべてを説明できるとは考えていないが, cardioplegiaの利点であるdiastolic arrestが得られず, 心筋のwall tensionが上昇したことは事実であり, 今後cardioplegiaの問題点として検討していく必要がある. |