Abstract : |
体外循環下開心術症例22例を対象として, 開心術, 主に体外循環に伴うカテコラミン代謝の影響を検討し, 血中で主に作用を有する遊離型カテコラミンの定量法を示した. また, 術後急性期での心機能および血行動態を血漿カテコラミン値と関連づけて考察した. 体外循環中に血漿ノルエピネフリン, エピネフリンは有意に上昇し, 特に遊離型の増加が認められた. そして血漿総エピネフリンの術後の減少において若年群では高年群に比べ遅延する傾向を認めた. 一方血漿Cyclic-AMPも体外循環中高値を示し, 血漿カテコラミンとの相関は, 遊離型ノルエピネフリンとはγ=0.61(p<0.001), 遊離型エピネフリンとはγ=0.55(p<0.001)の有意な相関を認めた. また, 血漿中と尿中カテコラミンの間には, 遊離型ノルエピネフリン間にγ=0.71(p<0.001), 遊離型エピネフリン間にγ=0.77(P<0.001)と有意な相関があり, 遊離型カテコラミンの定量が重要かつ意義深いものと考えられた. 心機能との関連では, 分時仕事指数および1回仕事指数を血漿エピネフリン値で除した値を心臓のカテコラミンに対する感受性の指標として検討したところ術後3時間に最低値をとり, 以後漸増し24時間以降は安定した値を示すことより, 開心術後早期では, 副腎より分泌されるエピネフリンが高値を持続していることが, 心機能の維持に影響する一因子と考えられた. また, 若年群では高年群に比べ心臓の感受性が術後急性期ではより低下しており, 若年群では体外循環による侵襲の影響が高年群に比べ著明であると推察された. 血行動態に関しては, 全末梢血管抵抗と血漿ノルエピネフリンの間に, 術後3, 6, 24時間でおのおのγ=0.65, γ=0.75, γ=0.62(p<0.02)と有意な相関が認められ, 開心術後の末梢循環不全の病態生理の上で, 血漿ノルエピネフリンの高値が重要な役割を果していることが示唆された. |