アブストラクト(30巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : カリウム加体外循環血によるcardioplegia:70症例の検討
Subtitle : 原著
Authors : 平明, 丸古臣苗, 屋良勲, 森下靖雄, 有川和宏, 村田和武, 浜田義臣, 秋田八年
Authors(kana) :
Organization : 鹿児島大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 1
Page : 14-20
Year/Month : 1982 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 体外循環充填血に35-38mEq/l濃度のカリウムを加え冷却して手動で大動脈基部, あるいは冠動脈に直接注入するcardioplegiaを70例(1-59歳, 男38例, 女32例)に行った. 体外循環時間は128±57分, 大動脈遮断時間は85±42分であった. 症例は弁膜症41例と先天性心疾患23例が代表的でその他が6例であった. 手術は同一の術者, 同一のチームにより, 単弁手術25例, 二弁手術16例で, 弁置換は単弁18例, 二弁6例であった. 先天性心疾患にはtotal correctionを行い. その他には冠動脈手術や大動脈瘤手術例がある. cardioplegic solutionの注入は初回282±71ml, 以後25±5分間隔で150-200mlで心電図上のcardiac standstillを目標とし, 心筋温は16-17℃が得られた. 体外循環中のカリウム値は4.0-4.5mEq/lが得られた. 注入液は体外循環液なので特に問題ないがその高PO2, 低PCO2は今後検討されるべきものと考えられた. 本法による手術死(術後一週間までの手術に関連した死亡を含む)は4例(5.7%)で低心拍出によるものは1例のみであった. 熱稀釈法による心係数は3.4±0.81/min/m2と術後の値として良好であった. これらの成績を同一の術者, 同一のチームによって以前に手術されたtopical coolingでの49例の成績と比較した. topical coolingでの大動脈遮断時間は本法で行ったものより30分以上も短かったが補助循環時間は長く, 結局, 体外循環時間としては大差はみられなかった. 手術死は7例(14.3%)でうち6例を低心拍出で失った. 疾患の構成は類似しており, 大動脈遮断時間が短いにかかわらず部分体外循環による補助循環を長く要したことや, 手術成績から本法の優秀性は疑いない. 本法では至適な注入量, カリウム濃度, 注入間隔とその臨床的な指標, PO2, PCO2直なお若干の問題は残っているが, 簡便かつ安全で臨床成績も優れ, 現行のcardioplegiaでは卓越したものと考えられる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : カリウム心停止, 体外循環血, topical cooling
このページの一番上へ