Authors : |
佐藤重夫, 大西健二, 広瀬一, 中埜粛, 島崎靖久, 八木原俊克, 榊原哲夫, 岸本英文, 平中俊行, 河内寛治*, 酒井敬*, 井原勝彦**, 北村惣一郎***, 川島康生 |
Abstract : |
我々は, 経静脈心房用電極を用いた心房ペーシング治療の経験を生かして, 正常心房機能を有すると考えられた房室ブロック6例に対し, 心房同期型ペースメーカー(V.A.T. )植込治療を行った. 年齢は, 9歳から75歳, 平均61.7歳で, 男3例, 女3例である. 術前診断は完全房室ブロック5例(うち1例は先天性完全房室ブロック)と, Mobitz II型の第2度房室ブロックで2:1ブロックを示した1例である. ペースメーカー植込治療はAdams-Stockes発作2例, 全身倦怠感2例, 心不全2例の症状に対して行った. 術前の心拍数は30~43/分, P波の数は70~84/分ですべて整であった. 術前5例に心房機能を確めるために, 心房のオーバードライブサプレッションテストを施行し, 測定したcorrected sinus recovery timeはすべて525msec以下で, 心房機能は正常と判定した. 9歳の先天性例は, 左開胸で左心耳に心筋電極, 他の5例は腋窩静脈からtined J lead, ないしJ leadを経静脈的に右心耳に固定し, 得られたP波amplitudeは2.82±1.00mVで, P波のセンシングに充分であった. Cordis社製Omni-Atricor λ Model 208(V.A.T. )を, 9歳例では左胸腔内へ, 他の5例では右大胸膜上に植込んだ. 術後1週間目に測定した心拍出量, 1回拍出量は, おのおの3.58±0.96l/分, 55.2±8.85mlで, 心室ペーシング時に比べておのおの22.6%, 27.2%の高値を示し, 心房同期型ペースメーカー治療の有効性を認めた. また左室造影検査により求めた, 左室拡張末期容積は18%, 左室収縮末期容積は12%, 1回拍出量は22%, おのおの心室ペーシング時に比べ多かった. 術後follow-up期間は9ヵ月から1年9ヵ月(平均1年4ヵ月)で, その間P波のセンシングは良好で, 運動負荷時の心拍数の増加は良好であった. 正常心房機能を有し, P波をセンスするのに充分なamplitudeが得られる房室ブロック症例は, 本ペースメーカー治療の適応と考えられる. 特に充分なる運動量を要求される若年者, 及び心予備力の低下した高齢者が良い適応と考えられる. |