アブストラクト(30巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : ダウン症を伴う単純心奇形の肺血管病変に関する組織計測学的研究
Subtitle : 原著
Authors : 八巻重雄*, 堀内藤吾*, 鈴木康之*, 石沢栄次*, 加畑治*, 関野美仁*, 佐藤尚*, 新井悟*, 吉田芳郎**
Authors(kana) :
Organization : *東北大学医学部胸部外科, **東北大学医学部小児科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 30
Number : 1
Page : 44-51
Year/Month : 1982 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : ダウン症を伴う先天性心疾患では乳幼児期より肺高血圧症の進行がみられるが, 肺血管床の特異性や肺血管病変の早期発生機序はいまだ明らかにされていない. 本研究では単純心奇形と完全大血管転位症を対照として, ダウン症を伴う単純心奇形の肺血管内膜病変の程度を組織計測により求め, 肺動脈圧と対比した. その結果, ダウン症を合併した単純心奇形では生後早期より内膜病変が進行し, 同じ肺動脈圧の下でも内膜病変は完全大血管転位症よりは軽度であるが, 非ダウン症単純心奇形よりは高度であることが明らかになった. その原因を検索する目的で肺小動脈の中膜の厚さを計測すると, 肺動脈圧が等しく, かつ同じ半径で比較した場合, ダウン症単純心奇形の肺小動脈中膜は, 非ダウン症単純心奇形より薄く, 完全大血転位症よりは厚かった. 血管壁の単位面積当たりにかかる力の大きさ(T)はラプラスの定理により, 内圧(P)と半径(R), それに血管壁の厚さDによってT=P×R/Dと表わされる. PとRが一定の下では中膜の厚さ(D)によりTが規定されるので, ダウン症単純心奇形の肺血管壁にかかる物理的な力の大きさは非ダウン症単純心奇形より小さく, 完全大血管転位症よりは大きいといえる. したがって, ダウン症を伴う単純心奇形では完全大血管転位症ほどではないが, ダウン症を伴わない単純心奇形よりは早期に肺血管の内膜障害を起こし閉塞性病変が進行すると推察された. 完全大血管転位症で中膜が薄い原因は肺動脈血の高酸素血症などが考えられるが, ダウン症では先天的な中膜の平滑筋細胞のunderdevelopmentがその原因と示唆された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : ダウン症, 肺高血圧症, 肺血管病変, 組織計測法, IPVD法
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