Abstract : |
体外循環下開心術の感染防御機構に及ぼす影響を研究する目的で, 体外循環下開心術26例と, 対照群として体外循環非使用の全身麻酔下手術症例13例とに, 各種の免疫学的検査(多核好中球数, N.B.T. テスト, リンパ球数, T細胞数, B細胞数, IgG-FcR+-T細胞数, 免疫グロブリン分泌細胞数, 免疫グロブリン〔IgG, IgM, IgA〕血中濃度, 血清補体活性能, 補体成分〔C3, C4〕血中濃度)を経時的に施行して, 次のような結果を得た. 1. 体外循環下開心術により, 末梢血多核好中球数は著明に増加する. 好中球のN.B.T. 還元能は体外循環中, 一過性に低下するが, 術後速やかに回復する. 2. 末梢血リンパ球数は術直後から第2病日まで有意に減少する. T細胞, B細胞は術中から術後にかけて数の減少とともに機能の低下を示す. 回復はB細胞の方がT細胞に比し速やかである. IgG-FcR+-T細胞数は術中, 術直後の減少は軽度であるが, 第2病日より著明に減少し, 第14病日でも低値を示す. 3. 免疫グロブリン, 補体成分血中濃度及び血清補体活性能は, 体外循環中に著明に低下する. 稀釈率で補正しても対照群との間に有意差が認められる. またIgG, IgMでは体外循環時間の延長とともに血中濃度の有意の低下が認められる. これらのことから, 体外循環そのものが免疫グロブリン, 補体の変性を引き起こすことが確かめられた. 術後, 次第に回復するが, 術前値に戻るまでの期間は各成分により差があり, IgGでは1週間以上である. |