Abstract : |
開心術後の肝障害についての報告は少ないが, 最近では病悩期間が長く術前より肝障害のある重症例に対して開心術を行う機会が増加してきており, 術後の肝不全発生の頻度が高くなることが考えられる. しかし体外循環中及びその前後の肝機能を判定する良い指標に関しての研究報告は見られていない. そこで現在臨床のroutine検査として用いられているインドシアニングリーン(以下ICG)を用いた肝機能検査が体外循環中にも使用し得ることを確認した上で, 臨床的には体外循環が肝に対してどのような影響を与えるのかを, ICG排泄能より観察し, 実験的には肝機能を良好に保ち, ICG排泄能を改善するための体外循環の諸条件を検討した. 臨床例10例において, 手術前後及び体外循環中のICG排泄能, 血清酵素値並びに肝機能を表す諸指標を測定した. その結果体外循環中の血清総ビリルビン値及びLDH5の上昇は, 体外循環の肝に与える影響によるものと考えられた. また術前より肝機能が正常な症例では, 体外循環による肝の機能低下は軽度であり, しかも可逆的であるが, 術前より肝の機能低下のある症例では, 体外循環による肝機能低下は大きくかつ体外循環時間が長いほど進行してゆく可能性が示唆された. 一方実験例より, 体外循環の肝機能を良好に保ち, ICG排泄能を改善するためには肝の血液poolingを少なくし, 充分な肝血流量を保つことが必要であり, そのためには血液希釈と拍動流による高流量潅流を行うことが有効であるとの結論を得た. |