Abstract : |
著者は45例の洞不全症候群(S.S.S. )症例のうち20例に心室ペーシング(VP)治療を行い, 残り25例に心房ペーシング(AP)治療を行った. そしてこれら45症例の術後遠隔成績をVP治療群とAP治療群とに分けて比較検討し, 次の結果を得た. 1. New York Heart Association(NYHA)の機能分類を用いた術前術後の機能改善の比較では, 両群とも改善を認めており, 両者間に有意差はなかった. 2. systemic embolismの発生は, 術後AP群では皆無であったのに対し, VP群では10.8%patientyearsと高率に認められた. 3. 不整脈の自覚は術後AP群では認められなかったのに対し, VP群ではその47%に認められた. 4. AP群が全例規則正しい心房の収縮機能を維持していたのに対し, VP群では心房の収縮機能が維持されていたのは50%だけであった. 5. 両群にわたって2度又は3度の房室ブロックの発生は認められなかった. これらの結果よりS.S.S. に対するAP治療は心房の規則正しい収縮機能を温存し, 心房性期外収縮や心房細動等の心房における不整脈の発生を予防する働きをもっている. また, その心房の規則正しい収縮機能が心房内の血栓形成を阻止し, systemic embolismの発生を予防していると考えられる. |