Abstract : |
巨大肺嚢胞症の外科治療法に関して, 術式は残存肺温存の目的からも, 嚢胞切除術と肺縫縮術が一般に用いられている. しかし, 高齢者の症例には, 残存肺の“き弱性”と術後に閉塞性肺病変が顕性化する場合があるため, この術式として広く用いられているNaclerio-Langer法では, 持続的な空気漏れや, 新しい嚢胞の形成の可能性があることを知った. そのため, 我々は, 術式の改良・工夫を行ったので, その術式を紹介し, 報告・検討を加える. 我々が, 過去6年間に外科治療を行った60歳以上の高齢者巨大肺嚢胞症症例は6例(全例男性で平均年齢は66歳, 最年長症例は72歳)であった. 嚢胞部位が両側性の場合は, 二期的に手術を行ったため1側を1例と数えると9手術例になる. そのうち7手術例に嚢胞切除と肺縫縮術を行い, 最初の2手術例には, Naclerio-Langer法を行った. その2手術例中1例は慢性閉塞性肺病変を合併しており残存肺は“き弱”で, 人工パッチにて補強縫合したが, 空気漏れに苦慮し, 術後慢性気胸へと移行した. 他の1例は, 術後喘息発作を起こし, 空気漏れは増強し, ドレーン抜去が遷延した. この2例の経験より, 高齢者の症例には, Naclerio-Langer法は不適の場合があることを知った. このため我々は, 嚢胞に交通する細気管枝を巾着縫合にて閉鎖後, 嚢胞底部の嚢胞壁より肺実質内に深く縫合針を挿入し二重に縫合, 先の縫合で不十分な閉鎖の細気管枝をも閉鎖する. 更に嚢胞壁を一部残し折り重ね, それを二重に縫合し, 針穴からの空気漏れ防止と肺が再膨張したとき, 容易に縫合部不全を起こさぬように配慮した術式を行った. この方法を残りの5例に行い, 特に72歳の最高年齢・重症低酸素血症症例にも行い, ドレーンは左右とも3日目以内に抜去し得, この結果, 残存肺は十分再膨張し合併症も減少した. 他の症例も同様に良好な結果を得た. 高齢者の症例には, 今後もこの方法を継続して行っていく方針である. |