Abstract : |
我々は1971年よりA-C Bypass術を行ってきたが, 術中の心筋保護法として, 初期の頃は, 軽度低体温, 完全灌流間歇的大動脈遮断法(I群), と部分灌流心拍動持続法(II群), を行ってきた. その後, 完全灌流電気的誘発細動法(III群)を, 更に心筋局所冷却法(IV群)を, 最近ではCold Cardioplegia法(V群)を行っている. 補助循環も含めた体外循環時間は, グラフト1本当たりの時間で, V群が最短であり, I群が最長であった. 心筋障害が原因と思われる手術死亡例は, I群が3/11例, II群0/7例, III群1/7例, IV群0/8例, V群1/11例とI群が不良であった. 術前後の心機能及び術後の血清酵素値の変動において各群間に差を認めないが, perioperative infarctionはI群で2例, III群に1例見られ, 術後出血はII群に2例, III群に1例見られた. 術後グラフト閉塞もII III群に多かった. これは術中心静止が得られず, 手術手技的に困難があるためと思われる. IV群, V群は最近の症例であり, 技術的にも進歩してきた時期ではあるが, 特にV群は三枝病変例5/11例と多技病変が多いにもかかわらず, 手術死亡率に関しては統計学的に各群間に差はないものの, 術後の心機能, 合併症等においてほゞ満足すべき成績であった. 心筋の弛緩と無血視野で確実な手術が可能であり, A-C Bypass術中の心筋保護法として, V群は他に比し優っているものと思われる. |