Abstract : |
乳幼児期開心根治手術の成績は, 近年, 疾患の種類によっては安定してきたが, 手術対象となった疾患の術前及び術後遠隔期の心機能の評価や患児の術後歴の検討は十分になされておらず, 今後に残された問題である. 乳幼児期に重篤な病態を呈し, 根治手術を必要とした心室中隔欠損症の13例について, 術前及び術後1年の左室造影像を計測し, 正常対照群と比較検討して次の結論を得た. 1. LVEDVI, LVESVI, SVIはおのおの術前148±29ml/m2(M+SD), 56±14ml/m2, 92±26ml/m2, 術後1年91±19ml/m2, 31±9ml/m2, 60±14ml/m2, コントロール群68±11ml/m2, 22±6ml/m2, 47±10ml/m2, であり術前群と術後1年群間及び術後1年群とコントロール群間に統計学的有意差が認められ(p<0.01or0.02), 術後1年にも左室容量負荷の影響が残存することが判明した. 2. LVMIは術前108±28g/m2, 術後72±19g/m2, コントロール52±12g/m2であり, 術後群も有意にコントロール群より高く, 心筋肥大の存在が認められた. 3. E. F. は術前61±8%, 術後67±6%, コントロール68±7%であり術前群のみが有意に低値をとっており, 術後群は正常のE. F. に回復していた. 4. Ec. (Eccentricity)の測定では収縮末期, 拡張末期共に術前群, 術後群は正常コントロール群よりも低値をとり左室形態の球形化傾向が判明した. 5. 収縮末期, 拡張末期のEc. の差であるΔEc. は術前群では負の値をとるものもみられ, 高短絡を有するVSD児の左室収縮様式の異常が示唆された. 以上より高度の短絡を有し, 2歳以下に根治手術を必要としたVSD児の術後1年における心臓では, 術前の容量負荷によってもたらされた左心室の拡張傾向と肥大傾向を残しており, E. F. は回復しているものの, 球形化した左心室形態を残していることが判明した. |