Abstract : |
術後肺合併症殊に術後無気肺・肺炎発生のリスクを予測するための術前肺機能検査として, flow-volume(F-V)曲線, closing volume(CV)が適当であるか否かを検討した. major surgeryを全麻下に待機的に行った40歳以上の197症例を対象とした. そのうち術後肺合併症を起こしたのは29例で, 残りの168例は起こさなかった. 両群の背景因子を比較すると, 手術時間, 術中出血量に差はなかったが, 喫煙歴, 開胸手術は合併症群に有意に多かった. スパイログラムは両群ともにほとんどの例で正常換気例であった. F-V曲線, CVについては, V25, VFRC, (FRC-CC)などが, 合併症群に有意に低値であった. ちなみにVFRCはF-V曲線におけるFRCレベルでのVmaxを意味し, CCはclosing capacityの略である. 術後無気肺, 肺炎の起こる機序は, 術前既にCCがFRCレベルを超える例, あるいは超えなくともFRCレベルに近接する例は, 術後にはFRCの減少がCCの減少を上回るため, CCは容易にFRCレベルを超えて安静換気中も末梢気道の閉塞を来して喀痰喀出が障害され, ついには喀痰貯溜が中枢気管支に及ぶためと考えられる. |