Abstract : |
肺葉切除術を行った肺癌患者35例にtechnetium-99m microsphers human serum albumin(以下99m Tc-MISA)による肺吸入シンチとtechnetium-99m macroaggregated albumin(以下99mTc-MAA)による肺血流シンチを, 34例にXenon-133(以下133Xe)による肺換気・血流シンチを術前に施行した. そして, 99mTc-MISA肺吸入シンチより得られた患側の肺吸入分布, 99mTc-MAA肺血流シンチより得られた患側の肺血流分布, 133Xe-肺換気・血流シンチより得られた患側の肺気量分布(V), 肺血流分布(Q), 肺換気分布(V)と術前の呼吸機能から, 数式を用いて術後の呼吸機能の予測値を算出し, 術後の実測値と比較検討した. 呼吸機能のパラメーターとしては, 努力性肺活量(FVC), 1秒量(FEV1.0), 最大換気量(MVV)を用いた. なお, 術後に著明な無気肺・胸水貯溜・癌再発などを認めた症例は対象から除外した. 各定量的肺シンチによる術後の呼吸機能予測値と実測値とは, 相関係数0.7413から0.9278, 危険率はいずれも0.001以下と良好な相関を示した. すなわち, 術前の呼吸機能と定量的肺シンチから, 肺癌葉切患者の術後の呼吸機能を正確に予測することができた. そして, 術後 の呼吸機能を予測することは, 呼吸生理学的な面から手術適応を判定するうえで有用であった. 各定量的肺シンチによる術後の呼吸機能の予測に大差なく, 現在のところでは, 99mTc-MAA肺血流シンチによる予測が, 簡便さ, 正確さの点で最も優れていると思われる. 術前の呼吸機能と非侵襲的な肺シンチから術後の呼吸機能を予測することは, 手術適応の判定に有用であるだけでなく, 手術々式の選択や術後の呼吸不全に対する対策を立てるためのデータ提供としても有用であるため, 高齢者肺癌患者の増加につれて, 今後ますます重要になるものと思われる. |