Abstract : |
心筋保護法における血液成分冠灌流液(blood cardioplegic solution)の有効性を証明するため, GIK液に全血を加えたBlood-GIK液を作成し, その心筋保護効果をGIK単独液と比較検討した. 実験方法は, 雑種成犬心肺標本作成下に1時間ごとに両液の間歇的冠灌流を行い, 計4時間に及ぶ長時間阻血実験を行った. 心筋保護効果を判定する指標として, 心蘇生後の左室1回仕事量(LVSW), 及びreperfusion後のcoronary sinus blood(CSB)pHを使用した. 阻血中の心筋温をmoderate hypothermia(20-25℃), deep hypothermia(10-15℃)の2種類に設定したので実験群は, Group I : Blood-GIK solution, moderate hypothermia, Group II : GIK solution, moderate hypothermia, Group III : Blood-GIK, deep hypothermia, Group lV : GIK, deep hypothermiaの4群に分けられ, 各群6頭ずつ実験を行った. 結果: LVSWの正常心機能領域への回復率は, Blood-GIK群のGroup I, IIIではともに6頭中5頭すなわち83%に対し, GIK群ではGroup IIが6頭中0(0%), Group lVが6頭中3頭(50%)と, Blood-GIK液の方が心機能回復率では勝っていた. またreperfusion直後のCSB pHは, Group I: 7.221±0.122, Group II: 6.881±0.082, Group III : 7.152±0.129, Group IV: 7.106±0.110と, GIK 群(II, IV)ではBlood-GIK群(I, III)よりも低値を示した. 特にGIK液のmoderate hypotherrniaでは阻血中にlactic acidosisが著明に進行している所見がみられた. 以上長時間阻血心筋に対する血液成分灌流液の有効性が, 心機能及び冠静脈血pHの面から実験的に立証されたが, 10℃前後に冷却した時のviscosityの上昇及び冠灌流圧の上昇などが問題点であり, 血液成分灌流液の冷却に際しては, 更に工夫が必要と思われた. |