Abstract : |
1976年2月以降, 大動脈弁閉鎖不全症を伴う上行大動脈瘤9症例に対し, Bentall手術の他, 大動脈弁置換(AVR)にAneuryslnorrhaphy(ANRP)を加えた手術を行い, 良好な成績を得た. 症例は男性7例, 女性は2例で, 年齢は21歳から55歳(平均34.2歳)であり, マルファン症候群が 4例, 大動脈炎によるものが1例含まれている. これらの症例に対し, 次の適応により, Bentall手術を選択した. 1) マルファン症候群に合併する場合, 2) 大動脈瘤が巨大で壁が薄く, 球型を呈している場合, 3) 解離が大動脈基部に及んでいる場合, 4) 細菌性心内膜炎を合併し, 炎症が大動脈弁に及んでいる場合, 5) 再手術症例. また本疾患の術中合併症, 予後を決定する大動脈壁の強度, 病変進行度を羽里の分類に従い, 病理学的に検討し, 弾性線維の障害程度を4段階嚢胞性中膜壊死(CMN病変)を5段階に分け, 各症例につき検討した. 手術成績は, 全例生存しており, マルファン症候群を有するAVR+ANRP施行症例の1例が, 6 年後にperivalvular leakage瘤再発を来し, Bentall法による再手術を行ったが, 他のBentall症例4 例とAVR+ANRP症例は全例NYHA 1度に復しており, 瘤再発その他の合併症をみていない. 病理学的検索では, Bentall手術施行例の弾性線維障害程度, CMN病変がいずれも高度であり全例III~IV度であった. 一方, AVR+ANRP施行例ではマルファン症候群を有する再手術症例の1例を除き, 病変は軽度であり, I~II度のものが多かった. 本症の外科治療に関する我々の考えは, Bentall手術を最初から選択するのではなく, 大動脈瘤の性状, 原因疾患の種類により, AVR+ANRPで十分な場合があると考えている. また病理学的検索により, 我々の行ったBentall手術症例は, いずれも弾性線維障害の程度, 病変が高度であり, 手術適応の妥当性のよい裏付けとなった. |