Abstract : |
132本の単独大伏在静脈グラフトを対象として, 冠動脈バイパスグラフトの開示性に関与する因子の検討を試みた. グラフト流量(CBGF)は開心群(112/132本:85%)では65±35ml/min, 閉塞群(20/132本:15%)では41±22ml/minと有意に開存群で多かった. 開口率はCBGF 20ml/minを境として有意の差を認め, 20ml/min以上では107/118本(91%)であるのに対し, 20ml/min未満では5/14本(36%)と低値であった. しかしCBGFの増加に伴って開存率が向上する傾向は見られず, 100ml/min以上の高流量グラフトにおいても20本中3本の閉塞が認められた. 冠動脈狭窄度が90%以上のものへのグラフトは80/90本(89%)が開存しCBGFは67±34ml/minであったが, 狭窄度90%未満では32/42本(76%)の開存でCBGFは48±24ml/minと低値であり, 両群間のCBGFに有意差を認めた. 冠動脈径が2mm以上のものへのグラフトは93/103本(90%)が開存しCBGFは68±34ml/minであったが径2mm未満では19/29本(66%)の開存でCBGFは40±26ml/minと低値であり, 両群雨で開存率とCBGFに有意差を認めた. CBGF 20ml/min未満の低流量グラフト14本において, 内径2mm以上で狭窄度90%以上の冠動脈へのグラフト2本はすべて開存し, 内径2mm未満で狭窄度90%未満の冠動脈へのグラフト5本はすべて閉塞した. 術中にdipyridamole 10mgを静脈内投与しCBGFの反応を観察した41本のグラフトで, 6本の無反応グラフト中3本(50%)が閉塞した. またCBGF 10ml/min以上の増加がみられたものは1/32本(3%)の閉塞であったのに対して10ml/min未満のものでは4/9本(44%)と有意に高率に閉塞した. 以上より冠動脈・バイパスグラフトの開存性にグラフト流量, 冠動脈径, 冠動脈狭窄度が大きく関与していること, また術中のdipyridamole負荷テストが開存性を予知する一助となり得ることが示された. |