Authors : |
松井完治, 河野博之, 中島淳博, 栗栖和宏, 緒方行男*, 芦原俊昭*, 稲生哲治*, 福山尚哉*, 安藤廣美** |
Abstract : |
単独冠状動脈バイパス術(CABG)の連続63症例を対象とし, 非糖尿病群(I群)38例, 境界点群(II群)9例, 糖尿病群(III群)16例に分けて, 糖尿病が冠状動脈病変及びCABG手術成績に及ぼす影響について検討した. 冠状動脈スコアを用いて, 冠状動脈病変の重症度及び広がりを検討したが, 冠状動脈全体(全スコア;I群15.7±5.5, II群14.1±5.9, III群17.1±6.3)でみても, 各冠状動脈枝のdiffuse lesionの頻度でみても, 各群間に差を認めなかった. 病変(>50%狭窄)枝数はI群2.5±0.6枝, II群2.6±0.7枝, III群2.5±0.7枝で, 1人当りのグラフト数はI群2.3±0.9本, II群2.2±0.9本, III群2.1±0.7本で各群間に差を認めなかった. また, 術中のグラスト吻合部冠状動脈内径, 冠状動脈壁硬化度スコアにも各群間に差を認めず, 更に静脈グラフト血流量(I群98±49ml/min, II群92±39ml/min, III群112±55ml/min), 早期グラフト開存率(I群91.4%, II群94.1%, III群96.9%)でもIII群はI群に劣らず良好であった. 病院死は, III群の1例(1.6%)のみで死因は髄膜脳炎であり, 他に感染性合併症としてII, III群の各1例に前縦隔洞炎を併発した. 生存例の症状改善度は各群ともに良好であった. 以上より糖尿病症例, 非糖尿病症例の冠状動脈病変, 手術成績には差を認めず, 糖尿病例も非糖尿病例と同様のCABG適応で望むべきと考える. 但し手術合併症として感染症には十分な注意を要する. |