Abstract : |
Ca拮抗剤が開心術中の虚血心筋に対して, 心筋保護効果があることが判明し, 種々なCa拮抗剤が心筋保護液の添加剤として使用されるようになった. 本研究では雑種成犬14頭を用い, In situ isolated dog heartにおけるnicardipine添加高カリウム心筋保護液の心機能に及ぼす影響をnicardipine非添加のものと比較検討した. 90分間の循環停止後, 再灌流を60分間行い, 循環停止前と再灌流60分後で心機能の回復率, 水分含有量の変動, 心筋微細構造の変化を検索した. 心機能はIn situ isolated dog heartの左室内に挿入したバルーン(容量5~20ml)によって等容性左室機能を測定することにより求めた. Nicardipine群では再灌流時に7例中5例(71.4%)に自然拍動が得られたが, Control群(nicardipine非添加)ではすべて心拍動に直流除細動を必要とした. LVSP, positive dp/dt及びnegative dp/dtの回復率はNicardipine群で有意に良好であった. LVEDP値及び左室distensibilityは, Nicardipine群では循環停止前と再灌流60分後の間に有意差がなかったのに対し, Control群では再灌流60分後にLVEDP値は有意に上昇し, 左室distensibityは有意に減少した. 左室自由壁水分含有量はNicardipine群では再灌流60分後に増加しなかったのに対し, Control群では増加した. 左室自由壁の微細構造は再灌流60分後においてもNicardipine群では略々正常であったのに対し, Control群ではミトコンドリアの膨化, 間質の浮腫が著明であった. 以上の結果より, myocardial contractility, relaxation, compliance及び組織学的にnicardipine添加高カリウム心停止液は開心術中の心筋保護効果を高める作用があり, 臨床上有用と判断された. |