Authors : |
薄田勝男, 斎藤泰紀, 太田伸一郎, 佐藤雅美, 高橋里美, 菅間敬治, 佐川元保, 永元則義, 藤村重文, 仲田祐 |
Abstract : |
肺癌開胸時に認める比較的少量の胸水に関して, その細胞診断学的評価は不明であり, その肺癌例の切除予後も明らかではないため, 開胸時に胸水を認め細胞診を施行した切除肺癌99例を対象とし, 胸水の量・性状, 胸水細胞診断, 腫瘍の進展及び予後との関係を検討し, 更に多変量解析による重回帰分析を用いて, 胸水細胞診陽性率と腫瘍の進展との関係式を算出した. 胸水細胞診の陽性率は21%であり, 胸水量との間には相関はなく, 胸水量の多少にかかわらず, 細胞診を施行することは正確な病期を把握するうえで大切であった. 扁平上皮癌の細胞診陽性率は, 他の組織型のそれに比較し有意に低値であった. 比較的少量の胸水に関して, 胸水細胞診が陽性であっても胸膜播種陰性であれば, 切除予後は3年生存率32%を示し比較的良好で, 手術適応があると考えられた. 胸水細胞診陽性率(Y)と胸膜播種の程度(X1)・胸膜浸潤の程度(X2)・リンパ節転移の程度(X3)との間には, 重回帰分析により, Y=0.344X1+0.050X2+0.034X3+0.075(寄与率0.840)の関係式が得られた. 胸水細胞診陽性率は胸膜播種の関与が最も大きいが, 胸膜浸潤及びリンパ節転移も反映していた. |