Abstract : |
雑種成犬を用いて左右気管支中枢端を並べて気管と端々吻合するいわゆる2連銃式分岐部再建を行い縫合糸の差異及び吻合部の部位別による治癒過程について実験的検討を行った.I群は吸収性縫合糸(Vicryl糸), II群は非吸収性縫合糸(Prolene糸)を使用した. 合併症は, 狭窄がI群1匹(3.1%), II群2匹(5.7%), 縫合不全がI群2匹(6.3%), II群4匹(11.4%), 死亡がI群3匹(9.4%), II群5匹(14.3%)であった. 術後良好に経過した例の内視鏡所見では, I群はII群に比べ術後3週までは発赤, 腫脹が強いが術後4週では発赤, 腫脹は消退して, その後両群間に差は認められず, I群では縫合糸は術後4週で消失した. Microangiographyでは, 両群共術後3週まで血管新生及び増生が認められ, その後正常の血管分布を示したのは術後4週であり両群間に差は認められなかった. 部位的には, 正常血管分布を示すのは膜様部が最も早く, 気管・気管支吻合部がこれに次ぎ, 分岐部吻合部が最も遷延した. 走査電顕所見では, 吻合部が正常線毛で被覆されるまでの期間には両群間に差が認められずそれぞれほぼ2カ月を必要とした. 部位別における上皮再生過程は膜様部吻合部が最も早く, 気管・気管支吻合部, 分岐部吻合部の順であった. 光顕所見ではI群はII群に比べ縫合糸に対する炎症反応が強く縫合糸が吸収されるまでに3カ月以上必要であったが, II群では術後2週で縫合糸周囲に肉芽の形成を認め, 以後軽度の炎症反応が続いた. しかし, 手技上縫合糸が弛緩して内腔に浮動した例では縫合糸周囲に長期にわたって慢性炎症所見が持続し, 吸収性縫合糸のI群に比べ炎症所見が極めて長期にわたり, 吻合部狭窄の一因となり得ることが示唆された. 気管分岐部再建においては血管新生が遷延する軟骨輪側の吻合に細心の注意を払うと共に, 手技的に巧拙の影響が少ない吸収性縫合糸を使用するのが妥当と考えられた. |