アブストラクト(38巻1号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 肺移植におけるPGI2アナログの効果に関する実験的研究
Subtitle : 原著
Authors : 大保英文, 山下長司郎, 中村和夫
Authors(kana) :
Organization : 神戸大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 38
Number : 1
Page : 57-65
Year/Month : 1990 / 1
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺移植における温阻血傷害に対するPGI2アナログの効果を, 犬の肺移植モデルを用いて検討した. 雑種成犬25頭を用い, Control群8頭, PGI2 1μg投与群(I2・1μg群)7頭, PGI2 50ng投与群(I2・50ng群)5頭, ヘパリン投与群5頭とした. 左開胸にて左肺門部を剥離郭清し, PGI2群にはPGI2アナログとしてOP41483を1μgまたは50ng/kg/minで30分間投与, ヘパリン群ではヘパリン100U/kgを投与後, 左肺を1時間の温阻血状態においた. 温阻血前, 再灌流直後, 1時間後, 2時間後に, 右肺動脈遮断下に動脈血を採取して血液ガス, シャント率, 左肺動脈圧, 左肺血管抵抗, トロンボキサンB2(TXB2)等を測定した. 屠殺後に肺動脈microangiographyを行い且つ組織学的検討を行った. 結果はPaO2, PaCO2共にI2・1μg群が4群中最も良好な値をとり, Control群と有意差を認めた. 肺動脈圧はヘパリン群, I2・1μg群が低く安定した値をとった. 左肺血管抵抗は, Control群では経時的に増加する傾向がみられたがI2・1μg群では増加せず, I2・50ng群, ヘパリン群はその中間に位置した. TXB2はI2・1μg群が全経過にわたり, Control群より低値をとった. 肺動脈造影所見についてみるとControl群では左肺動脈が末梢まで造影されなかったが, 他の3群では, 直径100μ前後の末梢まで造影され, 右肺動脈との差はほとんどみられなかった. 組織所見では, Control群で毛細血管内のスラッジ現象, 多角不正形の赤血球等がみられたが, I2・1μg群では認められず, 肺細小動脈の拡張が著明であった. 以上のことからPGI2アナログは微小循環改善や組織保護の効果を有し, 1μg/kg/minの投与で肺移植における手術操作や温阻血による組織傷害を軽減することが可能と思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 肺移植, 温阻血, PGI2アナログ, 組織保護効果, 微小循環
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